遠い音(Deafening) 

遠い音 (新潮クレスト・ブックス)遠い音 (新潮クレスト・ブックス)
(2005/08/30)
フランシス・イタニ

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フランシス・イタニ著 村松 潔訳

読みやすかった。久しぶりに女の人の本を読むと読書ってこんなに楽なものだったろうかと思う。よく頭に馴染むのだよね。500ページもあったのに苦じゃなかった。
男の人の本を読むと多かれ少なかれ異物を消化しているという気分になるのだ。

しかし、スラッと馴染んでしまう本はすぐ内容を忘れてしまったりする。
なので、今回は気に入った文章を書きぬきしながら読んでいった。

主人公のグローニアは5歳の時に猩紅熱にかかったせいで耳が聞こえない。彼女を通して耳の聞こえない方の生活というのはどいう感じなのか、すこし知ることができた。

耳の聞こえな幼い子が文字を覚えるにあたって、英語のような表音文字、日本語のような表意文字のどちらがより覚えやすいのだろうか?と考えてしまった。
英語の場合発音を知らなければ単語のスペリングを覚えるのは大変だ。でも日本語だったら発音を覚えなくても絵として文字が成り立っているから、文字を覚えるのはまだ容易な気がする。でも日本語の場合、文字を見てその単語を口で発音する場合は難しいのかも。
よく、わからないな。

この本の中に出てくる人たちは皆、善良で静かに自分の役目をきちんと果たしながら生きている。こういった静謐な人たちの話を物語として読むためには、戦争みたいな人の運命を押し流していく出来事と絡めなければなかなか話がまとまらないのだろうな。

心にしみた文章。
「グローニアは彼のために怒りが湧き上がるのを感じたが、自分には何もできないことはわかっていた。三人ともなにもできないだろう。これからも自分の人生を自分で引き受けていこうとする以外は。
自分自身で引き受けるという考え方を、生徒たちに教えてくれたのはミス・マークスだったが、グローニアはいまそれを思い出していた。「自分の手に負えないことは無視するしかありません」と彼女は生徒たちに言った。「しかし、自分の情報は自分で管理するようにすべきです。何が起こっているのか他人に教えてもらおうとするなら、あなたたちは自分の人生を他人に委ねることになるでしょう。自分たちの手で動かせるものもあれば動かせないものもあります。けれども、それで落胆するのではなく、自分には何ができるのかを知ることです」」   「遠い音」フランシス・イタニ 新潮社 261ページ。


アルネの遺品 

アルネの遺品 新潮クレスト・ブックスアルネの遺品 新潮クレスト・ブックス
(2003/02/26)
ジークフリート・レンツ

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ジークフリート・レンツ著

主人公の少年アルネが純粋すぎて痛々しい。

アルネは話の語り手のハンスの父親の友人の息子だった。アルネは一家心中のただ一人の生き残りで、ハンブルクの港のすぐそばのハンスの家に引き取られた。
アルネは純粋で頭が良く、傷つきやすかった。
5歳年上のハンスはアルネのことを理解できたが、ハンスの妹のヴィープケと弟ラースには煙たい存在だった。しかしアルネはヴィープケが好きだった。

ある日、アルネはボートに乗っていなくなってしまう。彼が見つかることはなかった。
ハンスはアルネの遺品を整理しているうちに、品々の一つ一つからアルネのことを思い出す。


読んでいて、私もアルネをちょっといじめたくなった。
いじめたくなるツボをことごとく押してくるの、アルネは。
本当に本当にいい子なんだけれど。
ヴィープケやラース、ペーターたちはそう積極的にアルネをいじめたいわけじゃなかったのだと思うのだけれど、人間の中にある加虐性を刺激してしまうところがアルネにはあって、せっかくハンスが守ってくれたのに、わざわざそんなことしなくてもいいのにー、とか、あー、そんなことわざわざいいにいかなくていいのにー、とか思ってしまってイライラしてしまった。

純粋も深い純粋だと周りの人はちょっと対応に困るところがあるものだなぁと感じた。
もっと要領よく生きられないものなのかな。
自分で自分を守ることは凄く必要なことだと思うのだけど。
でも、深い感受性の持ち主は生まれもって傷つきやすいのだろうから、そう簡単に図太くなれるものでもないのだろう。それに、アルネは父親の心中に巻き込まれたという心の傷もあるしね。

また、アルネが好きになったヴィープケは生意気な気位の高い女の子で性格が良くないのね。わざわざそんな子を好きになっていらぬ苦労をしなくてもとこちらは思ってしまうのだけれど、それも少年の性の力のなせるわざだからコントロールできないのは仕方がない。

アルネのヴィープケへの思いはコクトーの「恐るべき子供たち」のポールが少年ダルジュロスに抱いていた恋に似ているような気がしたな。

グレン・グールド 孤独のアリア 

グレン・グールド 孤独のアリアグレン・グールド 孤独のアリア
(1991/02)
ミシェル シュネデール

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ミシェル・シュネデール 千葉文夫訳 

グレン・グールドについてちょっと知りたくなって、関連本の中からこれが割と薄くて読みやすそうだったので読んでみた。
フランス人ってなんでいつもこんな風な抽象的な文章が好きなんだろう。
でも嫌いじゃない。

私はグールドの人となりを全く知らなかったので、今まで私が勝手にジャケット写真とかから思い描いていた人物とはかけ離れていることをやっと知った。

もっと他のグールド本も読んでみようかな。

彼はトーマス・マンの「魔の山」が好きだったみたいですね。
なんか、それわかる。
グールド自身が一人で魔の山をやってるみたいな人だもんね。
なんとなく。

贖罪 

贖罪 上巻 (1) (新潮文庫 マ 28-3)贖罪 上巻 (1) (新潮文庫 マ 28-3)
(2008/02)
イアン・マキューアン

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映画「つぐない」が公開される前に原作を読んでおこうと思い、2ヶ月ぐらい前から読み始めてやっとのこと読了。

私はいつも本を読むとき、後ろの方をチラ読みしながら読み進める癖があって、この物語の全容を早々としってしまい、読み進めるのがとても苦しかった。

令嬢のセシーリア・タリスとその兄妹と屋敷の使用人の息子ロビーはセシーリアの父親に分け隔てられることなく育てられた。
彼らの間では身分の差は問題になっていないはずだった。
しかし、ロビーがタリス家から援助を受け進学したケンブリッジで一等学位を取り、そのことに対してセシーリアの母親が実は快く思っていなかったこと、セシーリアの思春期の妹ブライオニーがロビーとセシーリアの関係を正しく理解できなかったこと、そして、ある事件が起こり、それがロビーを不幸に追い込む。

タリス家は何十代も続いた名家というわけではなく、セシーリアのおじいさんが商売で当て栄えた家で、いわば成り上がりだ。
使用人の息子を屋敷の息子、娘と同様に面倒を見るなんてことをするのは成上がりらしい行動のような気がする。
タリス家は学費を援助したことでロビーを自分たちの下に位置づけして、常に彼の上に立ち続けることができたはずだった。彼がケンブリッジの一等学位を取ってしまったことで、タリス一家はロビーに対する見方を変えざるおえなかった。

ロビーの本当の価値をわかったのはセシーリアだけ。

成り上がりの人たちは自分たちと同じく成り上がろうとしている人間に対しては、この非情さが一体どこから瞬間的に表れたのだろうと思うほど厳しいものだ。
ロビーはそのことを知らなかった。

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