ジークフリート・レンツ著
主人公の少年アルネが純粋すぎて痛々しい。
アルネは話の語り手のハンスの父親の友人の息子だった。アルネは一家心中のただ一人の生き残りで、ハンブルクの港のすぐそばのハンスの家に引き取られた。
アルネは純粋で頭が良く、傷つきやすかった。
5歳年上のハンスはアルネのことを理解できたが、ハンスの妹のヴィープケと弟ラースには煙たい存在だった。しかしアルネはヴィープケが好きだった。
ある日、アルネはボートに乗っていなくなってしまう。彼が見つかることはなかった。
ハンスはアルネの遺品を整理しているうちに、品々の一つ一つからアルネのことを思い出す。
読んでいて、私もアルネをちょっといじめたくなった。
いじめたくなるツボをことごとく押してくるの、アルネは。
本当に本当にいい子なんだけれど。
ヴィープケやラース、ペーターたちはそう積極的にアルネをいじめたいわけじゃなかったのだと思うのだけれど、人間の中にある加虐性を刺激してしまうところがアルネにはあって、せっかくハンスが守ってくれたのに、わざわざそんなことしなくてもいいのにー、とか、あー、そんなことわざわざいいにいかなくていいのにー、とか思ってしまってイライラしてしまった。
純粋も深い純粋だと周りの人はちょっと対応に困るところがあるものだなぁと感じた。
もっと要領よく生きられないものなのかな。
自分で自分を守ることは凄く必要なことだと思うのだけど。
でも、深い感受性の持ち主は生まれもって傷つきやすいのだろうから、そう簡単に図太くなれるものでもないのだろう。それに、アルネは父親の心中に巻き込まれたという心の傷もあるしね。
また、アルネが好きになったヴィープケは生意気な気位の高い女の子で性格が良くないのね。わざわざそんな子を好きになっていらぬ苦労をしなくてもとこちらは思ってしまうのだけれど、それも少年の性の力のなせるわざだからコントロールできないのは仕方がない。
アルネのヴィープケへの思いはコクトーの「恐るべき子供たち」のポールが少年ダルジュロスに抱いていた恋に似ているような気がしたな。